環境を変えたらせん妄が悪化?在宅介護で気づいた“ベッドの向き”の影響

ベッドの向きを変えただけなのに… 在宅介護
在宅介護とせん妄の意外な関係

寝返りが難しくなってきた頃の父の状態

父は自宅で転倒し、圧迫骨折で入院しました。
痛みで体を動かすことができなくなり、食事もとれなくなり、みるみる衰弱していきました。

入院当日は、玄関まで支えながら引きずるように歩き、やっと車椅子に乗せて介護タクシーで病院へ向かいました。
「このままどうなってしまうのだろう」
その不安は、今でも鮮明に思い出せます。

手術後はせん妄が出て、リハビリを始めることができませんでした。
面会に行くたびに「早く帰りたい」と訴える父。
その姿を見るたびに、胸が締めつけられる思いでした。

リハビリが進まないことで、介護施設への入所も勧められました。
けれど、このままでは父が生きる気力を失ってしまうのではないか。
そう思い、私は自宅介護の準備を進める決断をしました。

病院の患者サポートセンターやリハビリ担当者と退院に向けて話し合いを重ねましたが、現実的な支援は十分とは言えませんでした。
最終的にケアマネジャーへ相談し、訪問リハビリとデイサービスを組み合わせ、平日の生活リズムを整えることになりました。


安全のために行ったベッド周りの変更

退院後、寝返りが難しくなってきた父のために、ベッド周りを見直しました。

・手すりの上下を入れ替え、出入り口の位置を変更
・枕の位置を変え、体の向きを反対にする
・立ち座りがしやすいよう「介助バー」を追加レンタル

同じ向きで寝続けると姿勢が崩れてしまうため、
ベッドに入る方法を変えることで体の向きを自然に変えられるように配慮しました。

安全のための工夫でした。
そのときは、それが最善だと思っていました。


数日後に現れた「いつもと違う様子」

変更直後は順調でした。
寝起きもスムーズで、本人も新しい向きを気に入っているように見えました。

けれど数日後、少しずつ様子が変わっていきました。

・「誰かがいる」と言い出す
・手にゴミがついているように見える
・虫が見える
・夜ぐっすり眠れない
・些細なことで怒る

今振り返ると、せん妄の症状がじわじわと始まっていました。


ベッドから見える景色が変わったこと

父は、ベッドで仰向けになると天井の柄が以前と逆向きに見えるようになりました。

それだけのこと。
けれど、その“それだけ”が大きな変化でした。

発言や行動から、父は
「まだ病院にいる」と感じているように見えました。

景色の上下が変わったことで、自宅に戻ってきたという現実をうまく認識できなくなっていたのかもしれません。


「家にいるのに、病院にいる気がする」

せん妄が強くなった時期を振り返り、
何が変わったのかを考えました。

思い当たったのは、ベッドの柵の位置変更だけでした。

試しに柵を元の位置に戻し、入院前と同じ環境に戻してみました。

すると、夜落ち着いて眠れるようになり、せん妄も徐々に落ち着いてきました。

ベッドの向きを変えたことが、
父の心を不安定にさせていた可能性に気づいた瞬間でした。


環境を変えるときに、今なら気をつけたいこと

良かれと思って変えた環境が、
本人にとっては「知らない場所」になってしまうことがあります。

特に入院生活がつらい記憶として残っている場合、
似た景色や向きが不安を呼び起こすこともあるのかもしれません。

今なら思います。

安全や機能だけでなく、
“見慣れた景色”も守ることが大切だと。

できる限り、本人が安心できる環境を保ちながら、
少しずつ調整していく。

それが、これからの在宅介護で心がけたいことです。

▶【前回記事】福祉用具は「合う・合わない」が大きい。お試しレンタルで気づいた大切なこと

次回は、在宅介護で「日によって状態が違う」ことについて書いていきます。

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